バーガーショップの婆さんたち2012年02月16日 17:00

いや、「婆さんたち」はあんまりなので「お刀自さまたち」と言おう。
母の暮らす団地は、人口からいえば「独立してひとつの市」になってもおかしくないほどの規模である。
センターにはスーパーマーケット、商店街、総合クリニック、市役所の分所、図書館、郵便局に銀行まである。
その中にバーガーショップ「○ン・テ・オレ」はある。一応全国チェーンである。

しかーし。
私はここで客がバーガーを注文するのを見たことがない。
「たこやき」「焼きおむすび」冬場は「田舎汁粉・漬け物付き」夏は「かき氷」、地域のお客さまのニーズに応えて、独自メニューが展開されているのである。
圧巻なのは昼食時で、午前中クリニックに行って腰やらヒザやら、マッサージや電気をかけてもらったお刀自さまたちがここに集結するのだ。
「私、たこ焼き」
「あたしお汁粉」「あ、あたしもお汁粉」。
お年寄りの家に帰る夜6時に閉店という、普通のバーガーショップとはまるで違う時間がここには流れている。

「それにしても田中さん、今日もリハビリに来なかったわねえ。」
「先週もクリニックに来なかったわ。ここんとこ寒いから。」
「早く元気になって、またクリニックに来られるといいわねえ。」

あの…具合が悪いからクリニックに行くのでは?

「暖かくなったらまた会えるわよ。」
「そうねえ、春になったらねえ。」

田中さんはチューリップの球根かいッ!気の長い話である。

「クリニックに行って、帰りにバーガーショップでおしゃべりをする。」
というのが、ここではひとつの健康バロメーターになっているらしい。

この街に、私も引っ越す。たぶん「終の棲家」である。
その頃には知り合いも出来て、このバーガーショップにたむろしているんだろうな、などと思う。
ちなみにここのお汁粉は美味しい。
私が年をとるまで、不動のメニューでいてください(笑)。