その座標のとなり2009年05月13日 01:28

星座にはまるでうといわたしである。
判別できるのは、せいぜいオリオンと北斗七星くらいであとは全滅だ。
原因は、たぶん近視に乱視の混じったこの目玉と(裸眼だと三日月が3つ4つブッ
て見えたりする)育った環境による。
星が全然見えないか、あるいは見えすぎて、夜空が漆黒を通り越して青みがかった明るさの中に一面米粒をぶちまかしたような、星が多すぎて眩しすぎてどれがどれやら分からない、もうどうでもいいや〜な状態しか知らずに育ってしまったのである。
見えなさすぎるのも、見えすぎるのも考え物で、おかげで「星座占い」というモノなんぞまるで信じない人間に育ってしまった。 12宮、知らない。
なんでもわたしは牡牛座とゆーのになるそうだが、それがどんなものか、他の星座のみなさまととどう人格・運命的に違うとゆーのか、分からない。
         
美川憲一の「さそり座の女」は知ってるけどね(笑)。
    
我が相棒(夫ともいう)は、空気がきれいな土地で、程良く近視で育ったので?いろんな星を見分けるのが上手である。
「ほら、あれがシリウスであれがスバルで・・・」
なんてたまに夜空を指して教えてくれるのだけど
「ふむふむ、ほうほう。」
と感心しながらも、もう片っ端から分からなくなってゆくわたし。 カップルというのはあらゆる意味で「砂の城」である。 わたしの脳ミソはいつも波打ち際にある。
    
会社勤めの友人がいて、彼女は非常に頭が切れる。
何かの事情で手打ちコピーしなければならない書類のチェックの際、2枚重ねてライトに透かして見るという。 これならたとえ句読点ひとつの打ち損じであっても、ものの数秒もかからず一面全部わかる。
「ああ、なるほどなあ、頭脳ってそーゆーふうに使うものなんだなあ。」
と、そんな話を聞いて、ぼんやりもんのわたしは感動する。
     
天体観測の人はどうなのであろう。 新星の発見なんてときたまTVのニュースで見るけれど、ちっちゃなちっちゃな爪楊枝の先で突いたような白点、いったいどうやって見分けるんだろうか。 専門の天文台なら分かるけど、アマチュアが発見したと聞くと、どうしても「昨日の夜空の写真と今日の写真を重ねて透かし見してる」姿を想像してしまう。(いや、じっさいにはもうアマチュア天文家だってコンピュータばんばん使いまくる時代ではあるんだそうだけどね。)
あの白点のとなりの白点、その星の座標。 そのまたとなりの星の座標。
ぜったいわからない、わたし。
    
「なんでそんなもんが出て来ちゃったのかわからないのよ。」
とMちゃん(友人)は笑いながら言う。
インターネットでアドレスを打ち込んでいて、数字ひとつ打ちそこねたのか、それとも回線がちょっとばかり混線していたのか。
とにかく彼女のモニターに突然開いたのは、全然知らないどこかの主婦の「SM日記」のホームページだったのだそうな。
相手は夫ではない。 浮気でSM。 しかもホテルで撮った写真入り。
人にはどんな隠し事でもどこかに記しておきたいという欲求があるそうだが、そんな秘密日記サイトであったらしい。 ジェームズ三木もびっくりである。
何度も何度もホテルで会って、今日はこんなことをしたのあんなことをしたのと微にいり細にいり、ムチだローソクだ縛りだなんだとあって、そしてある日を境にぷっつり途切れているのだという。
わたしは別にひとさまが浮気してもSMしてもまったく構わないのであるが、その突然の「ぷっつり」が気になる。 まさか阿部定事件みたいにプレイがエスカレートし過ぎて相手が死んじゃったわけではあるまいな。
(あれはお定さんがちょいときつく相手の首を絞め過ぎちゃったんだそうな。)
「きっと家族にバレたんだと思うわ。」とMちゃん。
「別れたんじゃないの、SMの相手と。」とわたし。
その砂の城は、足元をさらう波だけだったのか。 だれも崩れる上から積もうとはしなかったのか。
知恵でもバカさでも愛情でも執着でも、何でもいいからとにかく崩れた分を埋めるだけのもんがなくちゃ、人間の業という押し寄せる波には追いつかないだろう。
脳細胞の足りない私にはこのくらいのことしか分からないのだが。
      
いずれにせよ、そのSMの主婦はサイトを閉じないままで捨ててしまった。
今もたぶんどこかにある、遠い座標のとなりのとなりのそのまたとなり。
夜空の星とおんなじで、わたしにはやっぱりよく分からない。