ドップラー豆腐店2009年08月19日 01:44

築40年の団地に住んでいる。何しろ当時爆発的に東京に経済が集中して、そうなると郊外に「働く人の家族が住むところ」が必要になったのだ。「団地・嵐の突貫工事」は建築基準法上「エレベーター不要」な5階建て。
ウチはまだ団地が全部出来あがっていないのに、最初に完成した棟に引っ越して来た。だから、買い物に行くのにも、まだ敷石を敷いていないでこぼこ道をぽくぽく歩いて行った。
棟が1つ1つ完成するたびに住人も増え、小さな商店街もできた。が。
お豆腐屋さんが無かったのである。
というか、当時お豆腐は自転車で、小さなラッパ吹きながら夕方回ってくるものだったのである。で「人口も増えたことだし」と少し離れたところにある店が、回ってくるようになった。
夕方ラッパの音が聞こえると、みんなボウル持って買いに行った。自転車に積んだ大きな木箱水とお豆腐を入れ、中蓋に油揚げやがんもどき、厚揚げなんか入れて居るのでものすごい重さで、ごっつい自転車で、当然速度はおそい。5階に住んでいた我が家も、となりの棟にラッパが聞こえたら、ボウル持って、小銭握りしめて、階段カンカン駆け下りて、買いに行くのが子供の仕事だった。

しかし。商店街のとなりに東京都の公設市場(小さなスーパー)が出来た。
商店街の肉屋や魚屋が移り、豆腐も当然あり、自転車のお豆腐屋もそこに卸すようになり、それでもバイクに買い換えて、夕方には廻ってきた。ただし自転車より速度が速いので「何時頃くる」と覚えて、あらかじめ下に降りて待っていなければ買えない。

ぷわぁっぱらっぱぷぁっぱあぁぁぁ〜〜〜〜・・・・‥…………  ・

「ドップラー現象」起こして走っていってしまうのだ。

お豆腐屋さんは「ドップラー豆腐店」になっしまったのである。
真夏の夕方なんぞは暑くて、真冬は寒くて、お年寄りは待っていられない。で、売れ行きがかんばしくなく、外回りは止めてスーパー専門卸しになった。

ところが、である。
石原都知事(のバカヤロー!!)が経費削減のため昨年公設市場を廃止してしまったのだ。安くて品揃えも良く、高齢層が増えたので「生ものを除く、買い物無料配達サービス」までしていたのに!
で、スーパーがなくなって、卸もなくなり、ドップラー豆腐店は(さすがにおじさんも年を取ってバイクはもう無理なので)ライトバンでゆっくり廻ってくるようになった。
ドップラー現象はもうない(笑)。
ただ、私は杖つきなので、やっぱりいつも買い損ねて、近所のコンビニに買いに行っているのであるが(笑)。

(「帰ってきた抜刀質店質店」(ググってね)切り株クリックの「雑記」に「発見!懐かしの線香花火!」を書きました。興味のある方はどうぞ。)