ハイジ・22015年07月08日 18:45

「アルプスの少女ハイジ」を全巻観終えた。
あーすっきりした。

実はこれは閉鎖病棟に入院していたときに、朝食のあと、知恵遅れのKくんと仲良く並んで再放送を観ていたもの。
Kくんには、リストカット常習犯で長期入院ののKちゃんという恋人がいて、あんまり仲良すぎるもんだから、途中で引き裂かれて老人病棟に移されちゃったんだ。
閉鎖病棟にコンドームはないからね。というか、セックスは、禁止だからね。
監視のため、ドアもカーテンもない(首つり防止のため)、通路一つ隔てて男病室と女病室に分けられているだけの、スリリングな空間(ただし巡回はしょっちゅうある)。
Kくんは、もう、見た目で、しぐさで、知恵遅れと分かる青年だったが、善良な人だった。
入院してしばらくしたら挨拶に来て、
「こ、こんな、い、いい新聞があるんだけれど読む…?」
と聖教新聞の切れっ端をくれた。
なにしろホールに読売と報知1部ずつしかなくて回し読みだったので、活字に飢えていて、とにかく「新鮮な読み物」だった。
Kくんに誘われて、毎朝テレビの前に陣取り、最後の食事者が終わると途中からハイジを観た。「食事中はテレビ禁止」の規則があって、いつも食べるのが遅いSさんが食べ終えるのを待って、スイッチを入れた。
私のハイジは、だから今回全編観直すまで、全部頭5分欠けていた。
途中から観だして、Kくんが老人病棟に移されるまで、ハイジは続いた。
私は早くに食べ終えるし、Sさんはくちゃくちゃ遅いし、いつの間にかワイドショーにチャンネルを合わせる者が出て、(チャンネルは先に見ている者優先という規則があった)だから私は、ハイジがフランクフルトにいる、「夢遊病騒ぎ」のあたりまでしか知らなかった。
今回全編通しで観て、
「ああ、こういう物語か」
と得心がいった。よかった、クララ立てて歩けて。

KくんとKちゃんはお熱かったけれど(いつも腰に手を回してふたりでいた)Kちゃんはイイトコのお嬢さん、サイドボードに差し入れの漫画本を1メートルも積み上げて(長期入院組)
「あ~、リタリンって飲んでみたいなあ~♪」
などと言って、おばちゃん(私)に
「こらっ!」
と怒られてきょとんとしている世間知らずの、ただリストカット癖のあるお嬢さんだった。口グセが
「(手首を)切りた~い、切りた~い」
で、それを唱えている限り退院の許可は出るはずもなく、Kくんの方が先に退院したと情報があった。
退院してKちゃんを待っているという彼の住まいは横浜の中心関内で、
「あら、いいところの坊ちゃんじゃないの」
という私は、同室者から
「でも3畳一間だって」
と教えられ、
(あ、施設入居者か、じゃ、この恋愛はちょっと無理だな)
と思うほどには、私は閉鎖病棟に馴染んでいた。

Kくんは仔ヤギのユキちゃんのファンだった。
施設の中ででも、Kちゃんを振り切れる、ユキちゃんのような恋人が出来ていたらいいなと思う。

ハイジを観て思い出したこと。

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