告別式の貼り紙2022年07月04日 01:38

自治会の掲示板に告別式の告知がぺらんと貼ってあった。

年寄りの多いご町内、亡くなったという話は年に何度かあるが、今は葬儀社のスペースで行うのが普通で、昔のように「狭い自治会館の和室を借りて、家族とご近所さんでお通夜」というのは絶えて久しい。告知も電話連絡で、貼り紙はまずめったにない。
告別式は駅そばの葬儀会館とのことであった。
90のおじいさんである。
夫ドッコイ氏が自治会の役員なので訪ねたら、
「ああ、もうとっくに引退したけど,以前毎年自治会の役員つとめて、『遣り手の自治会長』として有名人だった〇〇さん。
引退後はすぐそこの小学校の前で子供達のために黄色い旗ふってたおじいさんだよ」
あ、それなら知ってる人だ、毎朝ニコニコ子供達を渡らせてた横断歩道の、あのおじいさんかー。
雨の日も風の日も大変だったよな。
私が渡るとき
「おはようございます、ありがとうございます」
って挨拶したらニッコリいい笑顔だったよな。

しかし、私は彼のもう一つの顔も知ってるんだ。
子供の登校時間を過ぎてバスに乗ったとき。
最初はわかんなかった、旗も黄色いキャップも安全ベストもないから。
ただ「妙に似たおじいさんだなあ」と思った。
顔がね、エンマ様そっくり、おっかないの。
で、ものすごく不機嫌そうにふんぞり返って席に座った。
でも、やっぱりあの「横断歩道ではニコニコえびす顔の黄色い旗持ったおじいさん」に間違いなかったの。

人は何かしら複数の顔を持っているもんだ、多かれ少なかれ。
伝説の「遣り手の自治会長」とは、そういうことでもあるのかもしれないし。
「立場が変われば人格も極端に変わる人」というのは、決してめずらしいものではない。
それがいいのか悪いのかは、一概には言えない。

池波正太郎の「鬼平」だったか、裕福な篤志家の商人が捕まえてみれば大盗族のボスというのがあったな。
まったくもって、人は一面では測れない。

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