六月六日の奇跡2016年06月15日 19:07

大きな団地のはずれに住んでいる。隣は中学校で、校舎は窓からは見えないものの、音で気配が伝わってくる。
放課後ともなると野球部、サッカー部、ランニングのかけ声と、賑やかである。
異変が起きたのは今年の4月半ば。
「ファイト・オー!」
のかけ声の合間に
「ププッ」「ピー」「ブー」という音が混じるようになったのだ。
 ははあ、これはあれだ、大ヒットした映画「スイングガール」で聴き覚えがある。
「吹奏楽部」発足だ。志望者が多く、予算が下りたらしい。屋上で練習している。
 最初は音を出す訓練で、楽器本体からマウスピースを外し、息を吹き込んで、とにかく音が出るようにする。これが一苦労。
 ゴールデンウィーク開けには、自宅での猛特訓もあったのだろう、音は「ド~レ~ミ~ファ~」に変わった。しかしこれが心もとない。音がヘロヘロのヒョロヒョロなんである。
腹筋を鍛え、横隔膜を強靱にし、肺活量を増やさねばならぬ。まこと西洋楽器は体力である。だから、部員はランニングもやれば腹筋運動もやる。がんばれ吹奏楽部員!
 五月半ば、音は細いが全体に乱れなく「ドレミ」が吹けるようになってきた。しかし、来る日も来る日も「ドレミ」のままでまある。
 聴いている方もしびれが切れてくる。
「こんなことで夏の野球大会の応援演奏は大丈夫なのか?」
六月六日いつもの「ドレミを」一回やった後、異変が起きた。各自異なるスコアを渡されたようで、「ファファファ~」「ミ~ソラシド」などと拭いている。個人練習を終え一斉にあわせるとそれはみごとなハーモニーになった!六月六日の奇跡、おめでとう部員のみんな。 私も、忘れないよ。