死について・22016年04月14日 11:57

深夜、たどりついた小さなセレモニーホールの裏口に車を止め、職員ふたりがかりで義母をおろす。
別の路を走ってきたドッコイ氏もタッチの差で着いた。

母の遺体を安置室に運び込む。といっても、まあクローゼット冷蔵庫、押し入れくらいしか広さはない。
その前に台をしつらえて、手早く鈴、線香などが台に整えられ、拝む。
「ああ、お義母さんは『遺体』になったんだな。」
と、実感がわいてくる。

斎場の空き時間がいつあるか、葬儀の日程の組み方が、夜が明けてからでないと分からないので、とりあえず預かってもらい、ドッコイ氏の実家へ向かう。
途中24時間営業の西友で朝ごはんのパンと牛乳を買い、財布を出して金を払う。
昨夕容態急変の電話を受け、とりあえずコンビニのコーヒーとサンドイッチをかじりながら長野へひた走って、高速はETC、病院も会計が開いていないので後日払いで、葬儀社の人へはもちろん後払い、長野で初めての現金の出番である。

(そして、『現金払いでないものの額の怖さ』というもの、「お寺、戒名、葬儀社」と、後日私たちは向かいあうことになる)

朝を待って親戚に電話。父方母方ともに兄弟の数が多いので、頼りになる叔父さんふたりに頼んでそれぞれ連絡を回してもらう。

病院が開くのを待って入院費の精算に。
81才だったので高齢者医療保険で、3週間近い入院も3万円ちょっと。
ガンの末期で「延命治療はしない」ということだったのだが、そんなもんかと思う。

人は死に時によって相場が変わる。

死に場所によっても、相場が変わる。

(ああ、都会であっさり死んで、あっさり18万9千円の火葬で天に昇っていった我が父よ、まことに、妻想い、娘想い、婿想いの人でありました)

が、義母が前回義父の葬儀の費用記録をきちんととっておいてくれたのと、近所に心やすい叔父が住んでいて、葬儀社にも寺にも立ち会ってくれたので、金のない、葬式ビギナーな私たちでもなんとかなった。

なにしろドッコイ氏は年度末のゴタゴタで学校の事務のバイトを3/31でクビになっており、それ以前の長い失業生活で、義母の遺した以外金がないのだ。
それはかなりまとまった額で、結局無事まかなえたのだけれど、葬儀ひとつとっても義父は地場産業の元偉いさん、義母は顔が広く、さらに親戚筋集めたらトンデモナイ『大葬式』になってしまう。

叔父のひと声「兄弟葬にしよう」で、地元での最安値が決まった。
叔父さん叔母さんだけ集めて、それでも夫婦揃えば総勢26名である。

斎場の空きがなく、「一日待ってお通夜」になった。
ここで、田舎の葬儀社は何を考えているんだか、料理(通夜振る舞い、火葬が済んでの軽食、精進落とし)はみな「7の倍数」なのである。中華と和食と郷土料理のミックスでコースになっており、おみやげにはあんころ餅がつく、という不思議さである。これで人数22名だったら、私たちは「6人分のあんころもち(1パック2個入り)12個」を持ち帰り、朝な夕なに食事代わりにするところだった。

しみじみ、叔父さん叔母さんの人数があってよかった。


とりあえず、義母の入居していた特養(特別介護老人ホーム)が、亡くなったら3日で部屋を空ける決まりなので、高原へ行く。


義母がお世話になったスタッフ、K丸さんと最後の書類会わせ。

前に入居していた(順番待ちで)、刑務所のような「個室幽閉老人ホーム」から移った義母を、特に
「まだ回復できる余地がある」
と見抜き、寄り添ってくださった職員。

「実は初めてお会いした時から大好きでした!」
「私もです!」
と別れ際に最期の告白。

この人がいてくれたから義母のホーム移転後飛躍的回復8ヶ月があった。
不随のはずの半身で、車椅子を『歩き漕ぎ』し、方向転換も可能になった。
義母の世界はどれだけ広がっただろう。
「屋外にでかけ、木の下のベンチでカレーライスを食べる」なんて開放感も味わったのだ。

K丸さんと私たちは戦友だ。

母が季節ごとに贈っていた新品同様の衣類やはいていない靴下など、遺したもののほとんどは無駄なく「長期入居者」などのサポートに使ってもらえることになった。
入った当初はいいもののだんだん身寄りが縁遠くなってゆく人など、需要はあるという。
タオル類も、名前が書いてあるので、バックヤード、サポート用に、ハンガーとハンガーラックも使ってもらうことにし、義母が数ヶ月前書いたという絵手紙を棺に入れるためバッグに入れて、あとは思い出のティーテーブルだけかついで帰る。

義母が「生きていた」ということは、使えるものを最大限生かしてもらうことで施設に生き続ける。
「ありがとうございました」
「こちらこそ、ありがとうございます」
懐の広いK丸さんに感謝しつつ、家に帰る。

(続く)

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