乳拓(にゅうたく)2012年02月13日 17:16

(「拓」は「拓本」の拓、「魚拓」の拓である。)

寒い季節だから暑い話でもいたしましょう。

さて私は20歳からひとり暮らしを始めたのであるが、途中まで(貧乏なので)クーラーは持たなかった。
最上階で、前後が空地、川、森、公園と風通しが良く、何とか扇風機で保てる環境だったのだ。
そういえば暖房もなかったな、卓袱台の上に毛布掛けただけ。若かったなー。

ま、それはともかく。
それから何年かして、私はある漫画誌の表紙を描くことになった。
大変な物入りである、カラーインク全色、画板、筆、絵皿がズラリ、机は6人掛けのテーブルで、画材を並べて台所で描いていた。
B5版の表紙を、拡大して、しかも表紙で文字が入るから上下左右動く可能性も含めてA3版の、イラストボードという厚めの紙に描く。

実はその夏、棟のどこかで天井から水漏れがあって、最上階の屋上全域、コールタールがひかれたのだ、突然の黒屋上に、夏は暑く、冬は寒かった。

ま夏、というと描いているのはもう秋の表紙である。緑のセーターにスウェードのジャケット姿の女の子、画題からして暑苦しい。
〆切りは明日である、時刻は真夜中である、汗がだくだく湧いてきてもう服なんか着ちゃいられない、手拭いのねじり鉢巻き一丁で、上半身裸で色を塗っていた。
A3という大きいサイズがまたクセモノで、漫画家はふつう商業誌の原稿は余白も含めて1・2倍、B4の原稿用紙に描く。
こっちは動く可能性も含めて余白に塗る分が倍以上ある。
で、上の方を塗るとなると156センチの私(当時)は、立って、腕をうんと伸ばして筆を使うことになる。

この”156センチで・立って・腕をうんと伸ばして”がまずかった。
一段落ついて、原稿を見ると、あれ、女の子の緑のセーターの下の部分2ヶ所、丸く色が抜けている。
まあ、まず印刷には出ないところなのであるが…小さいドーナツ状である。
中もぷちぷち、白くなってしまっている。

ふ、と私は下を見た。
乳首が緑色。

人体には「汗腺」ってありますね、それ、けっこう乳首と乳輪に集中しているのですよ。

ありゃー、やっちゃったよ!
私は自分の乳首の「乳拓」をとってしまったのであった。

私は自分の「おっぱいの汗腺の数」を知っているオンナである。
だけど誰にも教えてあげません。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

名前:
メールアドレス:
URL:
コメント:

トラックバック