つんつん2011年02月26日 22:12

かつて私は鉛筆を2百本使っていた。
一度原稿に入ると削っているヒマがないから。
まだ0.3のシャープペンは製図用で重くて、芯も硬い物しかなかった時代である。
細い線で描くので、OKはこのとんがり具合。


使い切り(右)と比べるとさほど差がないように見えるのだが、書き味はまるで違う。

もともと鉛筆削りを持っていなくて(兄貴は持っていたが)私の鉛筆は母が削り、後に自分で削るようになった。
こうなると自在に削れる方が機械で削るより書き心地が良い。

絵を描くのが好きで一度描き始めると止まらない私は、次第に手持ちの鉛筆の数を増やしていった。
最高で2百本。芯が丸くなっては換え、丸くなっては換え、私は描き続けた。
たまると、削る。精神を集中させ、一気に百本以上削り上げる。
短くなったのは鉛筆さやにくくりつけて、2センチくらいになるギリギリまで使った。
私は貧しくて、描くこと以外生きるすべがなかった。
やがて0.4ミリのシャープペンがでて、私は自分に会う文明の利器を手に入れた。
0.3ミリのシャープペンも羽のように軽くなり、Bの芯がでた。
鉛筆は私の手元を離れていった。
一心不乱に百本以上の鉛筆を削り上げる至福の時を失ったことに、仕事で忙しい私は気がつかなかった。

六角形の鉛筆は、私の指に一生消えないペンだこを遺した。

オマケはつんつんに刈り上げすぎたドッコイ


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