かがったソックス2010年08月06日 21:22

貧困ではなかったけれど、貧乏だった。
浪費家(キカイオタクで、本マニアで、クラシックファンで、当時!スキューバなんかやってた)の父のせいである。
養母の命令で朝5時半起きの越境私立通いになったのは12の時。
1年生150人のなかで遠距離通学ベスト1である。
母が小学校の出産育児休暇のピンチヒッター教員をしてくれたので学費が払えた。

「あなたのとなりはいや!」
と席替えで泣いていやがるほどのいじめっ子もひとりいたが、まあ雨漏りのする団地の2畳半住まい(押し入れ無し)の私とじゃ、波長もあわなかったんだろう。
市の小学校給食費免除率ナンバー1の貧乏街から通っているんだもの。
「あなた、臭い、汚い!」
と言われた。やれやれ、貴女はそう思いたいのね。風呂には入っていたのだが。

校章を刺繍した指定の木綿白ソックスは、遠距離通学ですぐかかとが薄くなった。
破ける前に母が電球にかぶせて、薄くなったところを糸でかがってくれた。
でもそこはごわごわして、柔らかかった子供のかかとはすぐ血が滲んだ。
勢いをつけて歩くと痛いので、足をひきずるようになった。

入学して1ヶ月目に生徒指導の先生が各クラスを回ってきた。
「ソックスをもっと丈夫に、化繊を混ぜてください。」
と、かがったソックスと血が滲んだかかとを見せた。
「善処しましょう。」
と年配のその先生は言った。

入学して1ヶ月半の誕生日、上級生のお姉さま方が4人で
「スギウラさん、お誕生日おめでとう。」
と赤いリボンにマーガレットの花束を持って1年生の教室までやって来た。
まるで志村貴子さんの「青い花」みたいだ。
(なぜだか私は年上と大金持ちにモテるのである・笑)

そこから、周囲の私を見る目が少し変わった。
なにせそんな「事件」初めてだったから。

いじめっ子はあいかわらずだったが、なんとなく、
「スギウラさんはスギウラさんの居場所を見つけた」のである。

ソックスは、じきに化繊混じりの、やわらかい、丈夫なものになった。

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