料(りょう)る人2010年01月06日 14:29

(写真は私が今まで見たなかで一番スペシャルな大根・笑)

一本の大根を買ってきて
「さあ、これをどう料るかな。」
とまな板の前で腕組みをするひとときが、主婦だけに許された醍醐味なのかもしれない。
葉は青々として新鮮だから刻んでひと塩して絞ってアクを抜いて、白いとこ4分の1を短冊切りにして、いろどりににんじんも添えて塩してあえて、2〜3日食べられる「大阪漬け」にしよう。ふっくらしたところは筒切り面取り隠し包丁を十文字に入れて「ふろふき大根」。いちょう切りにして豚汁にも使って、残りの4分の1は千切りにしてひと塩してからよく絞って、帆立の缶詰(もちろん安いほぐし実を)缶汁ごと、あとマヨネーズもあえて、プチトマトとパプリカとブロッコリーをあしらって大根のサラダ。いや、ぶり大根もいいかな。残りはおろして「シラスかなめたけで、朝一品作れるな〜。」などと考えてゆく。

故・向田邦子さんは、生涯独身だったが、食いしん坊で、沢山のお客(プロデューサーとか俳優さんとか)をもてなすためにオリジナルレシピをいっぱい作り、妹さんに「ままや」という料理屋まで持たせた。
彼女は売れっ子の30代の頃(まだ「コンビニ個食」の無い時代)「どんなに忙しくても、フライパンからじかにソーセージを食べたりはすまい。」と決心したという。とにかく売れっ子脚本家で、「四人」の「四」を書く時間がなくて「三人」の「三」に横棒一本足した、というほどの人が、である。

それぞれの料理が皿に盛った姿で目に浮かんで、おいしそうに食べてくれる家族の笑顔が嬉しい。
実際には食べ残したり、使い切れずに冷蔵庫の中で干からびさせちゃったりもするのではあるが、それを今は考えずに、空想を味わう台所というのはまさに「料る人の聖域」である。