志村けんさんが死んじゃったから2020年03月31日 00:21

今だから言うぞ。
武漢市の作家・方方さんの言葉だ。
「ひとつの国家が文明国であるかどうかの尺度は、高層ビルや車の多さ、強大な武器や軍隊や、科学技術の発達や派手な会議や絢爛な花火や、世界各地で豪遊する旅行客の数ではない。
唯一の尺度は、弱者にどう接するか、その態度だ」
(朝日新聞夕刊/2020/03/19)

志村さんは、孤独に罹患し、孤独に逝ってしまった。

荒井注さんが去った後、ドリフターズのレギュラーメンバー入りした志村さんには賛否両論いろいろあった。
しかし「ヒゲダンス」の曲を「これ、良いと思う」と持ち込んだのは彼自身で、音楽誌に「アルバム紹介」の評論コラムを連載し続けているほど、知る人ぞ知るインテリで努力家の人だった。

彼が去った「虚脱感」と「喪失感」を、私たちは
「好ましいタレントの死」
ではなく
「偉大なコメディアンの時代からの突然空白」
というショックと共に、思い出し続けなくてはならない。

宮城まり子さんの死と「やまゆり園事件」2020年03月31日 03:42

津久井の障害者施設「やまゆり園」で起きた、元職員による大量殺傷事件は、犯人が控訴を取り下げることによって「死刑」が確定した。
犯人は「死刑になることを望んでいた」が、裁判中「重度障害者は生きていない方が社会の幸福」という持論を通し続け、結局心のひだを見せないままに結審してしまった。
殺傷された人を人権的に保護するために「匿名」で、親族達は裁判所へ赴きさまざまな「私たちにとってはかけがえのない大切な命だったのに、なぜ、あなたは奪ったのですか?」という問いをぶつけたが、彼はまともに答えず持論を繰り返すのみ、ただ時間の経緯というむなしさだけが残った。
元職員で「入所者達が可愛い」と就職当初は発言していた被告が、なぜ「効率重視で大量の刃物を持ち込み、勝手知ったる部屋を回って」・「殺し、傷つけたのか」。
心優しい福祉施設職員を、差別、というより「区別」意識を抱き「優性以外は生存の必要なし」へと心導いてしまったモノは何か。これは「アーリア人種による国家」に執着し、ユダヤ人を・ロマ(ジプシー)・精神身体障害者・同性愛者を「収容所という効率的殺人工場で殺戮し続けた」ナチスの、ヒトラーの狂気的思想の復古である。

100点を取り続ける子供が、有名大学から大企業に就職し、一生リッチで居続ける、という戦後安定期に入ってからの日本教育の人生獲得競争の「ウラ側のツケ」が、突然社会の前面に躍り出てしまったのだ。

ここで今思い起こさなければならないのは「ねむのき学園」を創設して、それまで「障がい故に義務教育の権利すら放棄させられていた」障がい者の教育に全人生かけた宮城まり子さんのチャレンジであろう。
「豊かな精神性・感受性」を見いだし「美・音・創」の可能性から、世界的に高い評価を得て、障がい者の「充実した・幸福な人生」の道のりを、彼女は示したのである。
歌手である彼女は、声を発しない人の「歌声を聴く」パイオニアだった。

そんな宮城さんの人生が終わろうとしていたときに出現した「原理主義者」の犯行である。「キリスト教原理主義」「イスラム原理主義」は耳にする言葉だが、日本の宗教「神道」においても原理主義は存在する。

経典「古事記」を思い出して欲しい。
日本神話において最初に出現した男神と女神は、プロポーズの儀式に失敗し(最初に男から愛を告げ、女が受けるのが正解)、産まれた子供が「ひるこ」すなわち「障がい者」であったために、「この子は失敗」と言って水の流れに乗せて、捨ててしまうのである。2度目に五体満足な子供を得て、それを人間第1号とした。
日本の神話世界は、まず人類の優生保護を説いている、きわめて希な性格を持っている。
「弱者は殺せ」と。
この危険性。

日本神話の世界を国家の「天皇制」として戴くかぎり、天皇家は「古事記の世界に生きる日本の神主総代」であり続け、真の「平等的民主主義」は勝ち取れない。

偏った、圧迫した社会では、不満と失望から来る全体的体制拒否ゆえに大衆に復古運動が起きるのは、私たちは第二次世界大戦前夜に学んだ。
アメリカに端を発する世界的大恐慌により、大衆は資本主義経済と民主主義を見限ってしまったのだ。
あまり知られていないことだが、アメリカ大企業は独裁国ドイツを支持した。ドイツ軍用車の4分の1が「フォード製」なのである。

今、地球規模の温暖化と格差社会のるつぼの中、まさに「世界的混乱期、価値観の崩壊」が始まっている。

「やまゆり園」被告は、これが最初で最後ではないはずだ。
かならず彼に倣う狂者が、出る。

今は、過去古代文明に基づいて分析すると、明らかに「世界的文明の衰亡期」である。(コロナウィルス蔓延の混乱の中で、あまり言いたくないが、実はそう実証される「時」なのである)地球温暖化、貧富格差、民族移動…

この文章を読んだ方が、ニュースソースをしっかり持ち、正気を保ってこの混迷の時代に臨んでくれることを希望してやまない。