出来レース2015年10月04日 17:01

「出来レース」とは、結果の決まっているレースのこと。
漫画賞なんかでもあるし、建築業界でもあるし、広告業界、特に「電通」「博報堂」が出てくると、まずどんなコンペも「出来レース」である。

いま、Googleの画像検索で「週刊新潮 オリンピック エンブレム 2位3位」で引くと、たぶん2020年東京オリンピックの、例のあの「サノケン一人勝ちが一転盗作騒動で引き下げ」になったエンブレムコンペの2位3位が見られる。

なんじゃこりゃあ。
2位はまだ定規使っているけれども、3位なんてコドモのラクガキである。
佐野氏には電通がからんでいて、これは完全な出来レースであった。
落ちると分かって出した方は、後日ランクの低いもうけ話が入るシステムである。

出来レース、これは私の暮らしたイラストの世界にもよくあって、
「あさってまでにモーツアルトの横顔・3万現金払い」(新聞広告)なんて、やりましたよ、はい。
本番はないので先のスケジュールを押さえておかなくていい、という話。

「博報堂が本命なんだけれど、出来レース、やってくれる?」
と大学時代の同級生でデザイナーのサトちゃんから電話がかかったのは、
「そろそろ次の締め切りの準備しなくちゃ」
と言う時期
「江口寿史調でお願い」
はいはい、私「のらくろからギャグ・青年劇画まで」画風広いよ。
ラフだったらスルスルッと描けちゃう。
「はい、出来たよ」
と郵送したら3日後、夜遅くサトちゃんから明るい声で電話が。
「あのねー、博報堂に勝って、ウチのデザイン事務所の案が通っちゃったの。本番描いて!」
えーっっっっっっっ!
「江口寿史ってとこがよかったみたい、原稿、雰囲気あったし!」
雰囲気は出せても、江口寿史大先生にはなれません。あれは絶妙なバランスの上に成り立っているのだ。しかもラフは鉛筆画で、本番はカラー。
パソコン時代の前で手描きのナマ原稿は髪の毛一筋のミスも許されない(最初から描き直し)ものすごく時間と手間を喰うものなのだ。
色計算もせにゃならぬ。
しかも「販売促進ツール」なので、ラフは1枚でも、もう時効だから言いましょう「イシイのミートボールで女子高生のお弁当をカラフルに!」です、これはイメージポスターとして寄り添うふたりの女子高生を、売り場にあわせて縦サイズ・横サイズのポスターに、お客様に手にとってもらえる「お弁当レシピのイメージイラスト」まで描かねばならぬ。そのサイズや打ち合わせがまた日にちを喰う。
次の締め切りが迫っているというのに!

で、北向きの窓から自然光の入る昼間はカラー、夜は本来の白黒原稿で、不眠不休の地獄の日々を過ごした私は、
「私、もう絶対出来レースの仕事引き受けない!」
と心に堅く誓ったのでした。

追伸:「イシイのミートボール」は、売り場で見かけるたびに条件反射で胃が縮み上がるので、まだ食べたことありません。