オトコの居どころ・オンナのカンどころ2012年09月12日 21:28

大阪で「焼き肉」といったら「鶴橋」、「鶴橋」といったら「焼き肉」である。なんせ高架の「鶴橋・プラットフォーム」に降り立っただけで、もう焼き肉のにおいモウモウ、煙モクモクなのだ。戦後の、コリアンタウン&闇市の家並みがぎっちり詰まっていて、新宿西口の「思い出横丁」よりスゴイ。

今では海外事業部に戻って世界中行ったり来たりなドッコイ氏なのだが、ああ、「湾岸戦争」のおかげで「海外事業部はさておいて、国内事業部に回りなさい」という時期があり、
「大阪帝国ホテル」つー、
「東京の帝国ホテル」とはまったく別モンのビジネスホテルを常宿にしていた。
で、私は仕事の切れ目に遊びに行ったのだ、大阪へ。

鶴橋駅徒歩1分の焼き肉屋。
東京のそれとは違って、肉の厚さが5ミリはあるぞ。しかも東京の焼き肉屋とまったく違って「七輪の炭火で自分で焼いてください」なんである。壁も柱も油煙でヌラヌラしとる。

しかしそこで、私は面白い光景に出会うのである。はす向かいのボックス席に座って、女のほうがテキパキ肉をならべている。向かい合って座る男の方は、サンチェに包んだ肉を、「心ここにあらず」ってな表情で口に運んでいる。
女の方は、藤山直美さんをも~っといじって、太らせて、塗ったくりまくった感じ、絵の具箱をひっくり返したような服、毛皮のショートコート、宝石と衣装の派手な姿で、焼き肉を焼くたびにいっぱい付けた金色のネックレスやブレスレットがジャラジャラ音を立てている。

2人は会話をしていなかった。 お皿に大盛りの肉や野菜を焼きつつ一方的に話し続ける女。
「せやから、アンタがあんとき言うてくれたらよかったんよ!」
「あんときに、あないに上手ぁくやってくれればえかったんや」
「あんた、これからいったいどないする気ぃ~?」

突然男は立ち上がり、口も聞かずに店の出口へむかう。
女は尻が重い分「いきなり立ち」が苦手であるし、バックやらコートやら忙しい。しかし、手使いは遅いが、口は速い。
「ちょとアンタ、なんで肉残すのんっ!?」
男の背中に大声を投げつけて、じゃらりじゃらりと音を立てて、自分の荷物ひっつかんで。
「ねえ、なんで肉残すのんッ!!」
彼女の走るにあわせてアクセサリーを鳴らしつつ、化けすぎた藤山直美さんのように派手な・太い・金色のジャランジャランが小走りに出て行った。

不思議な、夢のようなこの光景を、ところが私と差し向かいで座っていたドッコイ氏はまるで見てないし、聞いてもいないし、覚えてもいないというのだ。

ああ、あんなに残されたお肉の運命やいかに?

カップル?多分別れたでしょう。(あっさり)