七階さんからのおたより2011年05月20日 00:55

うっかりミスで消してしまったこのコメント、少しずつ区切ってアップしてゆきます。

最初に「七階さん」について。
筆で身を立てていらして、保健体育の教員の免許を持っていらっしゃいます。
かなり以前、私の描いた漫画をたいそう気に入って下さってから交流が始まりました。
人間の体躯について専門的な知識のある方からのご意見というのは、ふだんなかなか目にすることのできるものではなく、貴重なので、プリントから復元しました。
今回「むっちむちのセーラームーン」にコメントを寄せて下さったのですが、私がうっかりミスで消してしまったので、復元しつつ私のコメントもつけていきたいと思います。
文章は「コメント」に積み重ねてゆきますので、お読みになりたい方はお手数ですがこの「七階さんからのおたより」をのぞいてやってください。

コメント

_ 七階さん&抜刀質店 ― 2011年05月20日 01:14

七階さんより

「お久しぶりです。筆無精ですみません。
震災の後、仕事もめちゃくちゃなスケジュールになり、
気持ち的にも「広告なんてつくってる場合なのか?」なんて悩んだり、
いろいろしておりました。
が、いつも、というか週に何度かはこちらを拝見させていただき、
こっそり勝手に交流させていただいております(笑)。
で、今日この記事にコメントさせていただいたのは、
いつも常々考えていたことと関係があったから、です。
今、女の子たちに人気のアニメ「プリキュア」ってご存じですか?
まあ、セーラームーンの子孫みたいなものです。
やっぱりキラキラのコスチュームを着てて、
仲間とともに元気に悪者に対峙する物語です。
彼女たちはほんとにエネルギッシュで、平和なときはダンスに熱中し、
いざ戦いとなると疲れを知らず、元気にパワフルに飛び回ります。
あんなの見たら、女の子、みんな憧れちゃいます。
それはいいんですが、私が気になってるのは、彼女たちの「体型」。
とくにエンディングの歌なんかで、すっごく気になるんですが、」

続きますが、ここで調べました。
「プリキュア」ってすごい人気アニメなんですね、テレ朝系日曜朝8時半(寝とるがな・笑)。
サイトにも行ってみました。
ほうほう、在りし日のセーラームーンを彷彿とさせるお嬢さん方。
しかし髪の毛フリフリでよく体型が見えないぞ、これは実物をこの目で見なければ。
というので、といあえずレンタル屋さんにレッツラゴー!

_ お返事抜刀質店 ― 2011年05月22日 15:37

七階さんより・2

「彼女たち、ガリッガリにやせてます。生きてるのが不思議なくらいに。

腕も脚も骨に肌色がついてるみたい。
首も肩も胴も、カカシみたい。
頭も骸骨に目鼻がついているようなもの。
そんな体で、あんなに元気にとびまわれるわけがありません。
普通にさえ動けないはず。
日常生活だって支障をきたすでしょう。
ドラマ中でおいしそうにケーキ食べたりしてるけど、
そんなこともできるわけがない。
なのに、アニメだからそれができちゃう。
エンディングの映像なんて、とくに動きがリアルで
(モーションキャプチャーで人体の動きをそのまま使ってるんでしょう)
あのガリガリのカラダで元気に踊っている人間が
本当に、本当に、目の前にいるようです。」


続きますがここでひと言。
す・ご・い。
本当に痩せている。
でもって、動きがスゴイ。セーラームーンの時は原作の絵を活かしてかなりデフォルメの効いた十三頭身だったのですが(笑・ものは言いよう、当時下手ックソで有名でした、原作者某先生)太もものあたりなんか、「あり得そうなリアル感」と二の腕の「あり得ないリアル感」との複合人体って感じですね。
ここまできたか、コンピューターアニメ。
話はすっ飛びますが、私は昔、キャンディーズのミキちゃんを見て「スレンダーなお嬢さんだな」と思いました。
その次にピンクレディーのケイちゃんを見て「越後獅子」を連想しました。越後獅子の子供たちは逆立ちの軽業のため親方にあんまりご飯を食べさせてもらえないのです。
その次に松本伊予ちゃんを見て「死」を連想しました。
私の歌謡曲芸能歴はここで終わります。「伊予は~まだ~十六だ~から~♪」があまりにも調子っぱずれだったからです。(続く)

_ お返事抜刀 ― 2011年05月23日 14:00

七階さんより・3

「それって危ない洗脳だと思うのです。
あんなの見たら、拒食症にだってなるでしょう。
太ってないのに、太ってるって思い込むでしょう。
あのガリガリがステキでOKなんだって思うでしょう。
普通に食べてるのに太っていくって、悩むでしょう。
だから、ちょっと太めでも、っていうかもしかしたら
“太って”なんかないのかもしれないけど、
アニメみたいに似合わなくて当然なんです。
むしろアニメみたいに似合うようになっちゃったら駄目だと思うのです。
だってあれは「ウソのカラダ」なんだから。
AKBやら少女時代やらを理想にするなら、まだましですよ。
だってあれは「本物のカラダ」なんだから。

ムキになってしまってすみません。
でも、いつも嘆かわしく思っていた問題なので、つい。
私が母親なら、テレビ局に文句、言います。
子供たちに誤った理想を植え付けるなと。
それが子供番組をつくる人たちのすることか、と。

久しぶりにお便りしたのに、こんな言いがかりみたいなこと
書いちゃってすみません。でも、保健体育の教員免許持ち(笑)として、
一言だけ言いたかったんです。また近況などは別の機会にご報告しますね。
私も、仲間も、元気にやってます。
まぁ、私たちは疑いようもなく「太って」しまったりしてますが(笑)。
では。。。」


七階さんのコメントはここで終わります。
「仲間」というのは、彼女と友人たちがかつて劇団を結成していたからで、舞台に立ち、演じ、踊り、歌うために、みんな鍛え上げられた体躯をしていました。
私は過去3人、拒食症の人と出会いました。
「食べる」と言うことの罪悪感と、「どんどん食べずにはいられない=吐き戻し」の狭間で痛々しく、ひょろひょろと竹ひご細工のように立っているのが精一杯の風情で「息をして」いました。
さて、わたしのお返事は、まずは古い書庫から引っ張り出してきましょう。
2007年の文章「アルゼンチンの女の子たち」です(続く)

_ お返事抜刀 ― 2011年05月25日 00:55

2007年3月某日の文章「アルゼンチンの女の子たち」(ちょっと変えてあります)

「やせて3ヶ月太って3日」とはよく云ったもんで(笑)、2ヶ月で10キロという新記録を樹立してしまった私である。 ・・・・さすがに米1袋分は重いわいな。
2キロほど落とした。(先は長いぞ~・笑)
しかし、それにしても何で?とあれやこれや考えて、思い出したよ、2ヶ月前に「胆石溶かす薬」の処方が替わったんだったは。

副作用、私はこれに本当にひっかかりやすい体質で、薬が効き始める前に副作用の方が出ちゃうことが多い。
眠気、だるさ、血圧低下、目まいに吐き気、過去の副作用を数えあげたらきりがないぞ、めずらしい(めったに出ることのない)副作用までちゃんとひっかかっていて、まだ誰も出塁する前に送りバントしちゃうバッターみたいである。
やれやれ、どうしたもんだかなぁ。
「キューピーマヨネーズ」のようなお腹をさすって、はあぁ~タメ息。

話変わって、確かアルゼンチンだと思ったが、昨年
「ティーンズの服は、S・M・L・ちゃんと各サイズ作りなさい」
という法律が南米の国に出来た。
ファッション雑誌のモデルサイズ(S)にみんな体格をあわせようとして無理なダイエットをして、メーカーも製造ラインが一本で済むSサイズしか作らない、だから服にあわせてますますダイエット・・・という悪循環の結果、ティーンズの女の子の4割が「拒食症」とゆー、とんでもない事態になってしまったんである。
子供はともすると極端に走るものだが、この女の子たちが内臓も骨も充実しないで成人したツケは、この先何十年あとに国単位で出てくるのだろう。
怖い話である。

自分の容姿は棚にあげて(ヨッコイショ)、私は20年間人の顔や体を描く仕事をしていた。
その鍛練のために、ものすごい人数のスケッチをしたが(ナマ木村拓哉から道の端で酔っぱらって寝てるオジサンまで)そのときの実感は「積極的に美しい(女優さんとか)人」は少ないが、「積極的に醜い人」も少ないな、というものだった。

マスコミのもたらす消費の偏り、その極端性は30年以上前から指摘されているが、「あなたを底上げしてあげましょう。」「これを消費すればあなたは幸せになれる!」という甘言は、いざそこに到達してみると「もっともっと『上』がありますよ」と耳元でささやく。
「身の丈にあった自分」を獲得するのは結構難しいことである。

ああ、天のお星さま、私からいらん副作用の脂肪を取って、アルゼンチンの女の子たちに分け与えてください。
大丈夫、1人あたりにすりゃぁ、ほんの0・1グラム弱位のもんです(笑)。


…5年後の今、アルゼンチンの女の子たちに配っていい脂肪はもう0・1グラムくらい増えました(笑)。
私は相変わらず3つの胆石を抱え、毎日何種類もの薬を飲み、暮らしています。
L.L.Beanでは「くびれ」がないので紳士物の良きお客さんですし。
49になりましたが、脳炎や記憶喪失の期間があるので、頭の中はもう10くらい幼いです。
体は確実に年をとりましたが。(サントリーのセサミンなんか飲んだりしています・笑)
「望ましい体躯を手に入れる」という難しさに、私も向かい合っています。
しかし、極端な「こうありたい体型」を幼い子供にインプリンティングしてしまうのは危険すぎます。

もうひとつ、私が出会った北欧出身のモデルさんについて書きます。(続く)

_ お返事抜刀 ― 2011年05月26日 21:47

ロッタさんと私

ロッタさんと出会ったのは20代中頃のことである。
「女性向け月刊誌の表紙撮影をするから取材に来て下さい。」
と、当時の担当編集者が言ったのだ。
指定された場所は恵比寿だった。
5月の閑静な住宅街に商業施設が混じり合ったと街。しかし私はそこで道に迷ってしまった。
私の横をひとりの金髪の女性が追い抜いていった。
180センチくらいの身長、すっぴんで、ストンとした木綿のワンピースにぺたんとした革サンダルを履いて、手には陽射しをさける日傘を持ち、他にポーチも何もなし。
びっくりするほどスレンダーである。が、ゴツゴツガリガリという風ではなく、自然に痩せている、そんな感じだった。
何となくカンが働いて、ついていったら案の定スタジオだった。
彼女はモデルのロッタさんだった。
「モデルの仕事は『素』でスタジオ入すること。」
メイクもヘアーもスタジオでプロがやるし、水着の撮影も入るというのでなんと彼女はノーパンだった。ビキニの場合下着のゴムの跡がいけないそうだ。
8ヶ月分、3シーズンの表紙を1日で撮りおろすという。
スケジュールとしてはかなりタイトである。取材する私も忙しい。
が、忙しいのは周囲で、モデルはカメラマンの要求に応じてポーズをつけていればよい。
ノリのいい音楽を流して、撮影が始まった。

2号ぶんくらい撮ったところでカメラマンの調子が変わった。
どんどんどんどん自由にポーズをとらせるのである。
「こんなポージングバリエーションのあるモデルは珍しいから、撮れるだけ撮ろう。」
1号あたり2百枚はこなしただろうか、中入り、お昼ごはんは高級仕出し。
天ぷら膳をロッタさんはパクパク食べた、エビ天はしっぽまで食べた。(こんなとこ観察している私も私)
モデルだからダイエット、というのはないらしい。
確かに1号2百枚はとんでもない重労働だし。

水着は案の定ビキニで、大きな地球儀ビーチボール(直径1メートル以上ある)を使って、彼女は2百ポーズ。
秋服はマロニエの枯葉(なんてものまで用意してある)を使って、はいパチリ。
冬号は発泡スチロールのスノーマンとたわむれて、夜9時、撮影は終わった。
ロッタさんは「デハサヨーナラ」と、また革のサンダルでペタンペタン帰って行った。

余計な筋肉をつけないためにジムには行っていない、ウォーキングだけ、と彼女は言っていた。
「モデルさんの取材」ではなく「スタジオ全体の取材」だったので、ダイエットのことは詳しく聞きそびれたが、夜をセーブするくらいで、特にしていない様子だった。
2ヶ月たって、発売になった雑誌の表紙は、地球儀とたわむれるロッタさんがとてもチャーミングに飾っていた。
奥付を見るとすみっこに4ミリ角ぐらいの文字で「表紙モデル・ロッタ」。
マスコミってこんなモンである。
ロッタさんが痩せていようと肥えていようと(肥えすぎは無理だが)人のプロポーションというのは一瞬の風のようなものである。
今、私は年をとって、「肥えるときは下半身、痩せるときは上半身・新陳代謝が変わり太りやすく痩せにくい」体質になった。
養母の死んだとき、介護やつれで38キロのガリガリだったのがウソのようだ。

みんな、手に入れたい体躯があるだろう。
だが、餅は餅屋、モデルのような人は少数派でよろしい。
彼女たちは1日に1600ポーズポーズを要求される重労働で、本当に、太っている暇なんきゃないのだ。
人として健全に生き抜くためには、「過度な自己理想」を幼い頃にインプリンティングされるのは酷である。
その前に、人としてやらなきゃならないことがあるだろう、4歳児には4歳児の、14歳には14歳の、20歳には20歳の。
不自然な人工美を生身に負わせるのは人に対して傲慢なことだ。
フィンランド人(ノルウェーだったかな?)のロッタさんは北欧人だからたまたま背が高くプロポーションが良く、運良く美貌もあり、極東の国日本でモデルをやってみたいという意志があった。
その場でとっさに200もポージングできる機転と根性があれば、もしかしたら祖国のどこか大企業の美人秘書になっていたかもしれない。

以上、私が生身で出会った一番の美女について。(笑)

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